アトリエギャラリー


メッセージ

   私は自分の版画がどれ程のものか
わからないが 一つの作品をつくり上げると
次の作品をと意欲だけはなぜか沸いてくる
「人並みのものを」と云うより
人が暮らしてきた年輪のようなものや
使い込んだ道具や家 石垣などを見ると
無性に画きたくなる 
使い込んだ美しさのようなもの 使い込んだ
古さや軒の傾きを見るとなぜか画にしたい
衝動にかられてくる それらを版画に
出来たらと思うと次から次へと意欲にかられ
へぼ作品が出来てしまう
そんな事のくり返しで今日まできてしまった
これからもこんな作品創りが続くだろうが
これが又無性に楽しいので困ってしまう

                 くにじ
 


 
2003年10月 竣工

「くにじ庵」について



 ここ丸子泉ヶ谷の地は、吐月峰とよばれる幾つもの小高い峰に囲まれ、丸子川へと繋がる谷あいの細い沢に沿って、穏やかな傾斜の小路が右へ左へとうねりながら静かに山奥へと続いています。連歌師、宗長が庵を結ぶ適地と考えた事にも頷けるほどの、侘びた素朴さの内にもそこかしこに雅な趣きが感じられる山懐の里です。宗長がかつて柴屋軒を建て作庭し、嵯峨野から移した竹林を育てたことで、より一層の風雅と品格が添えられ、その風韻がいまも残されている地です。



くにじ庵



 「くにじ庵」の建設計画にあたっては、この地の持っている品位と景観、周辺環境を損なうことないよう気を配りました。敷地は西から東に向かって穏やかな傾斜を上り、左手へカーブする道路に平行して建物が配置されています。東西間口の中心から東側は、道路の曲線に沿って半径50メートルの孤を描き、“登り窯”のように建立しています。銅板葺きの切妻屋根はかすかな膨らみ(むくり)に雨滴の先の軒を鋭く、外壁の出隅(角)は丸くして、尖鋭さと柔軟さを表現しています。

 北面の石階段のアプローチに沿った開口部は、道路からギャラリー内部の気配が感じられる程度に低く控えめに抑え、「中はどうなっているんだろう・・・?」「入ってみようかな・・・?」と、興味をそそられるよう試みました。玄関の建具は、夕暮れの灯りに〈うねり格子〉が浮かび上がり、この家のファザード(正面)の核となっています。敷地南北の奥行きには、石組みのアプローチと玄関コロネード(歩廊)を折り返すことにより、適度な“間”をつくっています。

 ギャラリーに足を踏み入れると、そこは天井の高い吹き抜け空間となって、主採光は天窓から採っています。中央の螺旋階段を見過ごして、東面の開口部から差し込む光が屈折した壁面に醸し出す陰影を味わい、大谷石の床の穏やかなスロープを歩みながら作品を鑑賞し終えたとき、目の前に大きな額縁から、石畳の前庭とその借景となる竹林の全貌、訪れる野鳥などをゆったりと楽しめる仕掛けになっています。



 宋長が長年暮らし、移ろいゆく景色を求めて日々歩んだであろうこの場所で、「くにじ庵」はこの土地とともに発揮されるべき力を具えた豊かな建築となり得るよう努力しました。緑に恵まれ設計に携わることができ幸運に思います。施主の曽根邦治さんの寛恕により私に一任くださったことに深く感謝申し上げます。

                                   高柳 掊



   
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